11月17日(土)13:30から、佐賀市八戸の旧枝梅酒造でアーバンデータチャレンジ2018 in 佐賀のアイデアソンが開催されました。旧枝梅酒造は、酒蔵をモダンに改造した飲食と多目的スペースです。当日は天気が良く、暑いくらいの陽気の中、参加者の多くが実際にバスを使って来場しました。Googleマップには、すでに佐賀市内バス路線情報が出て、徒歩と組み合わせた乗り継ぎもバッチリ! 今回東京からお越しいただいた伊藤先生(後述)も、タクシーを使わずに、佐賀空港からのバス乗り継ぎで、あっさり旧枝梅酒造までお越しいただけました!これには佐賀県民の私たちも驚きました。

https://goo.gl/maps/pk2naYV952B2(佐賀空港→旧枝梅酒造までのバスを使ったルート)

2018©︎Google, ZENRIN

確かに徒歩での乗り継ぎルートもバッチリじゃないですか♡
バス停からバス停までの徒歩による乗り継ぎ情報は重要です。
神GTFS!

2018©︎Google, ZENRIN

今回のアイデアソンでは、以下の流れで進められました。

  1. 旧枝梅酒造(開催場所)の紹介
  2. 東京大学生産技術研究所の伊藤昌毅先生の講義「公共交通の最新事情」
  3. アイデアソン

旧枝梅酒造の紹介

まず、アイデアソン開催場所である旧枝梅酒造について、NPO法人まちの根太(ねだ)理事長の武廣正純さんから紹介がありました。

旧枝梅酒造(ホームページ)は、幕末期に創業した長崎街道沿いの造り酒屋です。しかし、酒蔵としての使命を終え、使用されなくなった建物は老朽化が進み、敷地の広大さもあって長期間管理が困難な状況が続いていました。しかし、周辺地域市民の努力により、個人所有の建物の一部を佐賀市が買収、株式会社とっぺんが一部借り入れ、さらに、NPO法人まちの根太(ねだ)への寄付と管理委託で、維持・運営する道を拓きました。現在は、街道沿いに飲食「酒の蔵えん」と多目的のスペースがオープンしています。(特に大吟醸はすっきり飲みやすかったです!)また、東の蔵をコンサートができるホールに再構築するクラウドファンディングを募集しています。ご支援よろしくお願いします!

伊藤昌毅先生の講義

次に、東京大学生産技術研究所の伊藤昌毅先生から、公共交通オープンデータの最新事情について、参加者全員の上に座ってお話をいただきました。

近年、都心以外の人口が少ない地方の公共交通、とくに「バス」は、利用者の移動手段が自動車中心になり、経営難と運転手不足に苛まれています。一方で、通勤通学時間帯には、道路に自動車が溢れ、渋滞や事故の原因になっています。

元々、公共交通は、自動車を運転しない/できない人々、悪天候などの事情で自転車や徒歩が難しい人たちのために存在しています。これから30年の間にすさまじい勢いで少子高齢化になるのが確定している今、当事者である市民全体で、公共交通をより楽しく便利なものに変えなくてはなりません。

実はシリコンバレーのベンチャーは公共交通サービスに目を付けている

先に述べた通り、利用者減少でお先真っ暗課題山積と思われてきた公共交通ですが、新しい動きが既に北米、ヨーロッパの企業によって始まっています。

chariot:クラウド上で利用者が投票し、期限内で投票の多かった経路を採用する。
Uber Express Pool:車の相乗りサービスで、乗客の方が車が通る経路上まで歩く。降りるときも乗客が目的地近くに来たら降りる。待ち時間の短縮で料金をより安くできる。
City Mapper:ロンドン発のルート案内アプリで、電車・バス・徒歩、それらのお好みの組み合わせと、体を使った場合のカロリー表示、タクシーを使った場合の時間と料金、雨が降った場合のオススメルートとGoogleのさらに上をいくサービス。
Whim by MaaS Global:フィンランドで世界に先駆けMaaSを実現。
Moovit:イスラエル発の交通ナビゲーションアプリで、カバーエリアが85カ国、登録ユーザー数3億人以上と世界中に広がる。ただし日本のデータは現時点でGTFS公開が全国でも一足早かった山梨交通と稚内市の宗谷バスのみを表示可能。

これらの企業は、公共交通を「移動手段のシェアリング」あるいはMobility as a Service (MaaS、マース)という今風の考え方で捉えており、利用者が目的地に効率よく達するために、様々な既存の移動手段をクラウド上で組み上げていくサービスを開発しています。単なるバス、タクシー運営・決済のIT化や置き換えを目的としているのではありません。

企業側は、ユーザにとって最も煩わしい移動経路設定の手間をかけさせないようにする代わりに、移動情報を提供してもらうことにより、圧倒的な量と質をもつ「個人のニーズ」を把握することができるようになります。GTFS公開の次は、いかに乗客の移動データを収集し、活用するかが課題となります。

今回の発表資料として、伊藤先生のスライドが公開されていますので、以下をご参考ください。

ワンソース・マルチユースの相乗効果

標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)が公開されたのは2017年3月31日です。国内では利害関係を超えてバス事業者や自治体による公共交通オープンデータの公開・整備が活発になってきています。GTFSを公開するバス会社が増えてくるにつれ、そのデータを使って、データ提供者のみではカバーしづらい、市民発のより便利なアプリケーションがいくつも登場するようになりました。さらに、人口とバス路線、バス本数を可視化して適切なバスルートの検討も可能になりました。

佐賀市では2018年10月にデータを公開しましたが、バスにGPSを搭載しておりリアルタイム情報(実際にバスが定刻通り通過したか、遅れがあるかなど)を取得することも既にできるようになっています。

このように、データが一つ出てくれば、様々な使い方を考える人々や、全く想定していなかった層の利用者が現れます。ワンソース・マルチユースと呼んでいます。

アイデアソン

前回のアイデアソンで抽出した参加者の自由すぎるアイデアから、さらに具体的なイメージを各人で膨らませ、言語化していきました。(コンペが絡むため詳細は割愛)

最終的に全員で投票。4つの人気かつ自由すぎるアイデア(文化創成系2件、ウェルビーイング系1件、深刻な社会問題解決系1件)にまとめ、4つのグループに分かれました。そこから、アプリ化に向けて模造紙で流れを組み立てていきました。全員近所の寄り合い状態で、ひたすら必死に、そして笑いを交えながら頭をフル回転させました!(もしかして、日本人の多くは畳の上でものを考えるのが合っているのかもしれませんね☆)

最後はグループ発表で締めくくりました。伊藤先生からは、「バスのことをここまで楽しく話すグループは見たことない」との講評をいただきました。

次回は、モバイル機器で使えるアプリにしていきます。
12月8日/9日の両日、佐賀大学総合研究1号館(クリエイティブラーニングセンター)でハッカソンを開催します。

都合により途中でお帰りになった方には、決定したアイデア(模造紙)の画像を配布しますので、Facebook、このブログなどでご連絡ください。

どうぞよろしくお願いします。